神奈川新聞 2014年5月25日

かながわの本

「とびらのむこうがわ」 

いべ かすみ 著 

少女の感性、詩情豊かに

 昨年刊行された際の出版社の触れ込みは「10歳の横浜市内の小学5年生少女による書き下ろしエッセー『かすみのおはなし集』」。幼いころから童話の世界に親しんだ著者は「全部想像して書いた」と記していて、エッセーというより、童話・ファンタジー、それに詩を加えた計22編を集めた作品集だ。表紙、挿絵も著者の手による。

 全編、少女のみずみずしい感性と視点で詩情豊かに描かれており、ほほ笑ましく読める。C・S・ルイスの児童文学「ナルニア国ものがたり」の「ライオンと魔女」が好きで、読んでいるうちに童話の世界に入り込んでしまう「アスランの写真」、小学校を転校することになった少女が同級生から贈られた白い羽根によって冒険の世界にいざなわれ、太陽、川、木、風の精と遊ぶ「白い羽」の話も収めている。

 詩の「もしもわたしが」では「わたしが太陽だったら世界中笑顔に 雨だったら世界中のからからの所にふるだろう 鳥だったら世界中ゆうびんとどけて」と優しい気持ちを素直に表現した。

 本のタイトルとなった「とびらのむこうがわ」は「あさのとびらが開きます(中略)ぼくはくぐります あしたのとびら 今日のとびらはパタンとしまります」という詩から取った。  (楽)

(如月出版 TEL03・6657・9000、1028円)